
2016.03.16
移住と空き家とゲストハウス【長野県・1166バックパッカーズ】
知らない土地に移り住むこと。それは、とても勇気が必要で不安もたくさんあるけれど、期待もその分いっぱいあって、何か新しいことを始めたり、視野を広げたりするのに、ぴったりなことです。
環境が変われば、人間も変わります。人間が変われば、人生そのものが変わっていきます。移住することは、つまりはそういうことで、人生を一変させるような、ひとつのきっかけになり得るものです。
国内の移住先で人気なのが、長野県です。日本アルプスに梓川、上高地に軽井沢。高原野菜、信州そば、美味しい果物もたくさんあって。松本城に善光寺、馬曲温泉……。「長野」と言われていろんなキーワードがほわほわと頭の中に浮かんできます。それだけ、魅力的な地域なんでしょうね、長野県は(うらやましい)。
空き家をリノベーションして、ゲストハウスに
今回ご紹介するのは、この長野県に移り住み、空き家を利用して作られた「1166バックパッカーズ」のお話です。出典は、長野県の求人サイト・SALMON1000さん。このサイトも、求人サイトらしからぬオサレ~な作りです。さすが、長野(笑)。
1166バックパッカーズのオーナーさんは、飯室織絵さんです。飯室さんは兵庫県尼崎出身。大阪の水族館で勤務後、海外に3年間移住して働いていました。再び大阪に戻ってきた飯室さんが感じたのは、海外の自然に囲まれた生活と、日本の都市部での生活とのギャップです。「満員電車に乗らない暮らしがしたい」そう思った飯室さんは、上高地の宿で働き始めます。
宿で働いているうちに「自分が良いと思った物や情報を伝え、発信していきたい。ゲストハウスなら一人でできるかも」と思い始めます。そうして始めたのが、1166バックパッカーズです。
築80年の味をそのままに
土台になったのは、築80年の空き家でした。建物にはあまり手を加えずに、古い建物の味をそのままに、ゲストハウスへとリノベーション。そのため、空き家を借りてからわずか1ヶ月でオープンすることができました。
改修の際にネックになったのが「水道の配管」。1166バックパッカーズは、2つの建物をつないで作ったので、水道の配管が二つありました。そのままだと、基本料金が2軒分かかるというので、一つの配管に集約する工事をしたところ、思いのほか料金が嵩んでしまい……。
ですが、その他は極力費用を抑えています。玄関の扉、トイレの便器は、他の空き家の解体現場で出てきた掘り出し物をゲット。地域の人やSNSで知り合いなった人も協力をしてくれました。
移住者だから、できること
「よそ者だから、外から来たお客さんの気持ちがわかる」と飯室さんは言います。そして、この土地で商売をしているので、当然地域の気持ちもわかる。双方の気持ちを理解できる飯室さんは、旅行者と地域の人のパイプ役を担っています。
具体的には、宿泊者に町の飲食店を紹介すること。宿泊者が「1166バックパッカーズに勧められてきた」といえば、お店の人と宿泊者が普通よりも一歩踏み込んだ関係性ができます。そのためにも、飯室さんは日頃から地域の人との関係づくりを大事にして、宿泊者に地域のお店を紹介しやすい環境を整えています。
これは、他県や海外での移住経験が豊富な飯室さんだからこそ、できること。
移り住むこと。その土地土地の文化に深く触れること。それは旅行者では決して得られない、その土地で生活しないと得られないこと。そうして、新しい価値観を見出すこと、または、生み出すこと。
移住と空き家とゲストハウスのバランス
近年は、「仕事をして稼いだお金でマイホーム購入」というステータスが薄れつつあります。高い一軒家を購入するよりも、いろんなところに移り住み、見聞を広めることに重きを置く人が増えているのです。
これはつまり、「家に縛られない生き方」と言えます。外的充実よりも、内的充実の方が価値が高いという生き方です。一方で、空き家が増えているというのは周知の事実です。
要は、バランスなのかな、と思います。空き家の増加も、少子高齢化も、もはや止めようのない現実です。これらの問題を、近い将来の間できれいさっぱりに問題なしの状態にするのは、不可能といって良いと思います。空き家が増えれば、対策として再利用をする人を探せばいい。少子高齢化が進めば、子どもを産みやすい環境づくりを推進すればいい。
行き当たりばったりの対応にはなりますが、そうしてバランスを取っていくことは必要です。それを進めていく中で、長期的な展望のもと、バランスの取れた社会を目指せばいい(たぶん、ここの指針がないような)。
飯室さんの実践している移住と空き家とゲストハウスは、そういう意味でも良いバランスなのではないでしょうか。